誰の言葉で自分を評価するのか

Spark Lab(スパークラボ)の稲場泰子です。

今年の夏は本当に暑かったですね!

と、過去形にはまだできないくらい、9月半ばでも暑いですが、

さすがに夜になると虫の音とともに涼しい風も吹いて、

少しずつ秋がやってきたと感じられます。


さて、今回もアニメ話で行きたいと思います。

今回は第5シーズンが放映中の「文豪ストレイドッグス」です。


名前を知りながらあまり意識していなかった作品なのですが、

友人の中学生の娘さんが大好きだと聞き、

試しに配信で見始めたら一気にハマってしまいました。


「文豪ストレイドッグス」は、様々な文豪の名前を持ったキャラクターが、

「異能力」と呼ばれる一種の超能力を駆使し、

架空の町「ヨコハマ」で活躍するストーリーです。


今日はこの作品の主人公、

「中島敦(なかじま あつし)」について書こうと思います。

(ネタバレあり。また筆者は敢えて原作漫画を読まずにアニメを満喫すると決めているので、アニメで描かれているストーリーや設定しか認識していませんのでご了承下さい。)


「自分の存在とは」

主人公の「敦」は育った孤児院を追い出され、空腹と絶望でさまよう中で

「太宰治(だざい おさむ)」に偶然出会います。


その出会いを通じ、「自分は何も出来ない、存在価値のない人間」だと思っていた「敦」は、

実は強大な虎に変身するという「異能力」を持っていることがわかります。


「太宰」は異能力者が集まる「武装探偵社」のメンバーで、

行き場のない「敦」が探偵社で働けるよう計らいます。


「敦」は探偵社のメンバーに仲間として受け入れられ、仕事も任されるのですが、

活躍を期待される大事な局面になると、

「出て行けごくつぶし!お前などこの孤児院にもいらぬ!」

「どこぞで野垂れ死にでもした方が世間様のためよ」

と、孤児院で投げつけられた言葉が頭をよぎり、力を発揮できなくなってしまうのです。


一度は自分が発端で探偵社に危機が訪れたことがありました。

上司に

「自分のできることを考えておけ」

と言われた「敦」ですが、その時に頭の中に孤児院での言葉がよぎり、

「自分のせいで皆に迷惑をかける」「自分に居場所などない」と思い詰めて

自分から探偵社を去ろうとしてしまいます。

虎になれる能力を発揮しようとさえしません。


結局その危機は「敦」の勘違いで、

上司の「自分のできることを考えておけ」と言う言葉は

「探偵社の中で自分が出来る仕事を見付けて自主的に実施しろ」

という、額面通りの意味だったことがわかります。


「誰の言葉で自分を評価するのか」

私はコーチングやワークショップでこのような事例(もちろん虎になる人はいませんが)に多く行き当たります。


過去に人に言われた言葉をいつの間にか自分の中で繰り返し、自分自身で能力を発揮する機会や気持ちを抑えつけている方がたくさんいらっしゃるのです。


  • 子供の頃「○○すべき」「○○でないとだめ」と親に言われ続け、大人になっても「○○すべき」「○○出来ていないから自分はダメ」と自分を罰し続けている
  • 子供の頃に言われた「男の子/女の子」だから「○○でなければいけない」「○○してはいけない」と言われた規範にいつの間にか自分を当てはめて、無理に何かをしたり、しなかったりする
  • 学校の先生に「お前にはできない」といわれ、大人になっても「自分は出来ないからダメだ」と思い能力を発揮できなくなっている
  • 昔の上司に「お前に意見は聞いていない」と言われたため、その後上司や組織が変わっても自分の意見を言わないようにしている


これらはほんの一例です。


私達は自分の中で無意識に「セルフトーク」を行って自分の考えや行動を決めています。

コーチングの世界では、「セルフトーク」とはは、ほぼ無意識に自分の中で流れる、

自分の意識や行動を決定する言葉と考えています。


自分が上手く行かないときや、

「ルミナ・スパーク」で言う「行き過ぎた時の自分」になっているときは、

往々にして自分の中でネガティブなセルフトークが行われています。


そして時としてそのネガティブなセルフトークは

自分で思いついたものではなく、

どこかで他の人に言われて、それを内在化させてしまったものです。


「敦」のように、本来は「虎になる」という強大な能力を持っているにもかかわらず、

孤児院で自分は存在価値がないと言われ続けたことをセルフトークとして取り込み、

自分には価値がないと決めつけて力を発揮することすらあきらめてしまうのです。


何よりも悲しいのが、周囲が受け入れ、期待し、力を発揮する場を作ってくれていることに気づかず、あきらめて去ろうとしてしまったのです。


セルフトークが強すぎるが故に、周囲の状況を適切に判断する力も削がれてしまっていると言えます。


「セルフトークの変化」

その後の「敦」はどうなったか?

周囲の信頼にふれ、徐々に出来る事が増え、試練も乗り越えて少しずつ変わっていきます。

そして、セルフトークの内容が変わってくるのです。


かつては孤児院の院長や職員の言葉をリフレインしてたのが、

自分を受け入れ、メンターとして接してくれている「太宰」の言葉に置き換わっていきます。


「こんな時○○さんならどうする?」「もうあきらめちゃうのかい?」と。


そして周囲を助け、同じように「自分に生きる意味が無い」と思っている他者の考え方を変えようと関わり、虎の力もコントロール出来るようになります。


「虎は強いがお前は弱い」と言われた「敦」は「虎を手なずける強い自分」に成長しつつあります。


「セルフトークを書き換える」

「太宰」の言葉は質問の形になっていることが多いことも重要だと私は思います。

決めつけではなく、主体的・創造的に考えることを促してくれるポジティブな質問。

最強のセルフトークはこういうものなのかもしれません。


セルフトークを変えるのは難しいことです。

変えるための第一歩は、自分がどのようなセルフトークをしているか認識すること、そして、そのセルフトークがどのような「出自」のものなのか内省してみることだと思います。


多くの場合、自分の可能性を狭めるような破壊的なセルフトークは真実を一部だけ映しています。そして、自分を上手くいかせたり、身を守ったりするのに役立つこともあったと思います。


しかし考えてみて下さい。

  • そのセルフトークは今、この時点で有効なのか?
  •  いつでも、どこでも有効なのか?
  • そのセルフトークは自分の能力可能性を拓いているのか?


上記がNOであれば、新しいセルフトークを採用するチャンスかもしれません。

自分の可能性を拓く言葉や他の人に言われたやる気が出たことばを試しに採用してみて下さい。Yes/Noで答えられない「オープンクエスチョン」形式がお勧めです。


皆さんの内なる虎はまだ眠っているかもしれませんよ。

Spark Lab

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